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INTERVIEW
名医インタビュー
2025.08.28
整形外科
千葉

自らの経験を力に変える、スポーツ整形外科の名医
【直江高行先生/野田総合病院 整形外科】

まさてる散歩〜あなたの街の頼れるクリニック訪問〜

地域医療を支える千葉県野田市の中核病院、「医療法人徳洲会 野田総合病院」。同院で整形外科の副部長と人工関節/膝関節鏡スポーツセンター長を兼任する直江高行(なおえ たかゆき)先生は、豊富な国際経験に基づき、人工関節やスポーツ疾患分野でMIS(最小侵襲手術)を積極的に行っています。今回は直江先生に、医師を志したきっかけや、より良い医療に対するお考えを伺いました。

人生の転機は2度、父の死とブレイクダンスの怪我

____先生が、医師を目指されたきっかけは何だったのでしょうか。

医師を志すようになったきっかけは、小学生の時に父が他界したことです 。もともと両親が祖父母の介護をしている姿を日常的に見ていたので、漠然と思っていました。「何かしら医療に関わる仕事に就きたい」と。そんな中、父の死に直面し、子どもながらに「医師」という仕事をはっきりと意識するようになりましたね 。もちろんその時はまだぼんやりとしたものでしたが、その経験が私の人生の大きな転機となりました 。

____「医師になる」という決意が固まったのは、いつ頃でしょうか。

医師として生きていくことを自覚し始めたのは、大学4年生か5年生の頃です 。ちょうど臨床実習が始まり、専門とする科を具体的に考えなければならない時期でした 。当初は、人の命に直接関わる心臓外科や消化器外科に漠然と興味を抱いていました。しかし、ある大怪我をきっかけに私の気持ちは大きく変わりました 。

当時、私は、ブレイクダンスに熱中していました。今でこそブレイクダンスはオリンピックの正式種目ですが、アクロバティックな動きが多く、ダンスの中でも特に怪我の多いジャンルです。私も例に漏れず、怪我をすることが多かったのですが、大学4年生の時に練習中に膝に怪我を負ってしまい、手術を受けることになったのです 。 患者側としてメスを入れられる立場になり、痛みや不安を経験したからこそ、強く思うようになりました 。

「スポーツを含め、様々な理由による身体の痛みや機能障害で困っている方々の力になりたい」

この経験を機に、患者さまの生活の質(QOL)の向上を支える整形外科医の道へと、想いが固まっていったのです 。

手術はゴールではなくスタート   患者さまの未来をデザインする医療

____アメリカやヨーロッパ、アジア各国で学んだことを、現在の診療にどのように活かされていますか?

海外の医療現場で重視されているのは、「いかにして患者さまの身体への負担を少なくし、早期社会復帰を実現するか」という点です。国や地域によってアプローチは様々でしたが、共通していたのは「手術をゴールとせず、患者さまが元の生活に戻るまでをデザインする」という視点でした。その哲学にもとづき、人工関節手術や靱帯損傷等の膝スポーツ疾患、初期変形性関節症に対する骨切り手術等では患者さまの身体への負担が少ない「MIS(最小侵襲手術)」を取り入れています。

____先進的な技術を追求される一方で、患者さまと向き合う上で大切にされていることは何でしょうか?

私が何よりも大切にしているのは、「もしこの患者さまが自分の家族だったら、どういう治療を提案するか」ということです 。患者さまにとって、手術は一生に一度か二度あるかないかの一大事です 。その重みを決して忘れず全ての患者さまに対して自分の家族に接するのと同様に、心から納得できる治療法を提案するようにしています。

____ご自身も手術を経験されているからこそ、患者さまの不安な気持ちがより深く理解できるのですね。

「手術」と聞くと、誰でも怖いものです 。私自身も手術台の上で同じ気持ちを味わいました。ですから、手術前の説明では専門用語をできるだけ使わず、図を描いたりしながら、「これから何を行うのか」「それによってどう改善が期待できるのか」を丁寧にお話しするようにしています。患者さまが抱える不安を少しでも和らげ、信頼関係を築いた上で治療に臨む。そのプロセスも、治療の重要な一部だと考えています。

____患者さまとの関わりで重視されていることはありますか?

手術の成功は、決してゴールではありません。むしろ、患者さまが望む生活を取り戻すための新たなスタートだと考えています。私は日本整形外科学会認定の運動器リハビリテーション医として、術後のリハビリテーションも重視しています。手術で痛みや機能障害の原因を取り除いた後、適切なリハビリを行うことで筋力や関節の動きを回復させていく。この過程があってこそ、患者さまは「旅行に行きたい」「もう一度スポーツを楽しみたい」といった目標を実現できるのです。理学療法士をはじめとする専門スタッフと密に連携し、一人ひとりのゴールに向けてチーム一丸となって支えていくことを大切にしています。

信頼を紡ぐということ。人とのつながりが、より良い医療を生み出す

____先生が知識を増やしていく上で普段から行っていることがあれば教えて下さい。

技術の探求と同じくらい、「人とのつながり」は非常に重要だと考えています。国内外の学会や研修に参加すると、普段は出会えないような、北海道や新潟、大阪など、全国各地で活躍されている先生方と交流できる貴重な機会があります 。

そこで仲良くなって、「今度、先生の病院に見学に行かせてください」「ぜひぜひ!美味しいお酒でも飲みながら語りましょう」といった会話が生まれる 。そうしたつながりの中から、新たな発見や、普段は聞けないような技術的なヒントが生まれます 。医療は一人でできるものではなく、多くの仲間との協力や情報交換があってこそ発展していくものです 。

____地域における「信頼」については、どのようにお考えですか?

地域医療において最も重要なのは、「信頼」を得ることだと考えています 。特に地域のコミュニティでは、「あの病院の先生は良かったよ」という良い評判も、その逆も、驚くほど速く広まります 。以前の勤務先では、ありがたいことにGoogleの口コミで私宛に感謝のメッセージを書いてくださった方が何人かいらっしゃいました 。そうした一つひとつの声が、日々の励みになると同時に、身が引き締まる思いがします。結局は「どれだけ目の前の患者さま一人ひとりを大切にできているか」に尽きるのではないでしょうか 。その真摯な姿勢の積み重ねが、信頼関係の基盤となると信じています 。

____最後に、この記事をお読みの患者さまへメッセージをお願いします。

私も過去にブレイクダンスで大きな怪我をし、手術を受けた経験があります。だからこそ、患者さまの気持ちに寄り添うことを何よりも大切にしています。「自分の家族ならどうするか」を常に心に置き、皆さまが望む未来に向かって伴走する存在でありたいです。一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。

<プロフィール>
野田総合病院 整形外科/
整形外科副部長 / 人工関節・膝関節鏡スポーツセンター長 直江高行(なおえたかゆき)先生

日本大学医学部卒業後、東京大学病院、人工関節・膝スポーツセンターを経て、アメリカやヨーロッパ、アジア各国での留学経験を基に、膝・股・肩の人工関節全般、靱帯損傷等の膝スポーツ疾患、初期変形性関節症に対する骨切り手術等を行う。野田総合病院の人工関節/膝関節鏡スポーツセンター長として赴任し、現在に至る。

<専門分野>

人工関節(膝、股、肩)/膝関節鏡 スポーツ医学

<資格>

日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医 日本リハビリテーション医学会急性期リハビリテーション管理認定医 リバース型人工肩関節置換術認定医 日本スポーツ協会公認スポーツドクター AO trauma Basic&Advanced Principles Course 終了 日本外科学会 JATEC Course修了 日本救急医学会 BLS Course修了 日本救急医学会 ICLS Course修了 日本救急医学会 ACLS Course修了 日本救急医学会 PALS Course修了

<所属学会>

日本整形外科学会 日本人工関節学会 日本膝関節学会 日本股関節学会 日本リハビリテーション医学会


問い合わせ
04-7124-6666

野田総合病院
公式ホームページ:https://nodasougou-hp.jp/
取材日: 2025年8月8日