半月板損傷の症状とは?膝がカクンと抜けるサインと悪化させない方法

階段を降りる際の膝の痛みや、時々膝がカクンと抜けるような感覚。それを年齢のせいや一時的なものだと軽く考えていませんか?その膝の不調は、膝のクッションの役割を果たす半月板が傷ついているサインかもしれません。半月板は一度損傷すると自然に治りにくく、放置してしまうと痛みが慢性化するだけでなく、将来的に変形性膝関節症へと進行するリスクも高まります。
この記事では、整形外科専門医の解説に基づき、半月板損傷の基本的な知識から、症状を悪化させてしまう日常生活のNG行動までを詳しく解説します。
半月板損傷とは?放置が危険な膝のクッションの役割
半月板は、膝関節の中にあるC型をした軟骨組織で、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の間に挟まっています。この組織は、膝にかかる衝撃を吸収するクッションの役割や、関節を安定させる重要な働きを担っています。しかし、スポーツでの激しい動きや、日常生活での何気ないひねり動作、加齢によってもろくなることで、この半月板が損傷してしまうことがあります。血流が乏しい組織であるため、一度傷つくと自然治癒が非常に難しいのが特徴です。そのため、初期の段階で適切な対処をしないと損傷が悪化し、慢性的な痛みや将来的な膝の変形につながる可能性があるため、注意が必要です。
半月板損傷の代表的なサイン【症状セルフチェック】
半月板を損傷すると、膝に様々なサインが現れます。これらの症状に心当たりがある場合は、自己判断で放置せず、専門医に相談することが重要です。ここでは、特に代表的な3つの症状について解説します。
歩行時や階段での鋭い痛み
半月板損傷の最も一般的な症状は、膝を動かした際の痛みです。特に、歩いている時や階段の上り下り、膝を深く曲げ伸ばしする際に、膝の内側や外側に鋭い痛みを感じることがあります。損傷した半月板が関節の動きを邪魔したり、骨同士がぶつかったりすることで痛みが生じます。初期の段階では軽い違和感程度でも、放置すると痛みが強くなり、日常生活に支障をきたすようになるケースも少なくありません。少し痛むだけだと我慢せず、痛みが続く場合は注意が必要です。
膝が引っかかり、曲げ伸ばしができないロッキング現象
損傷して断裂した半月板の一部が関節の間に挟まってしまうと、ロッキングと呼ばれる、急に膝が動かなくなる現象が起こることがあります。まるで鍵がかかったように膝が固まってしまい、曲げ伸ばしが全くできなくなるのが特徴です。強い痛みを伴うことが多く、一度この現象を経験すると、再発を繰り返すこともあります。この症状が出た場合は、半月板損傷が進行している可能性が高いため、無理に動かそうとせず、すぐに整形外科を受診する必要があります。
膝が腫れて、熱っぽさを感じる
半月板が損傷すると、膝関節の中で炎症が起こり、関節液が過剰に分泌されることがあります。その結果、膝全体が腫れ上がり、水が溜まったような状態(関節水腫)になります。腫れと同時に、患部に熱っぽさを感じることも少なくありません。運動後や膝に負担をかけた後に特に腫れがひどくなる傾向があります。痛みだけでなく、明らかな腫れや熱感が続く場合は、関節内で何らかの異常が起きているサインと考え、早めに専門医の診察を受けることが推奨されます。
半月板損傷でやってはいけないこと5選【悪化リスク大】
半月板を損傷している、またはその疑いがある場合、良かれと思って行っている運動や、無意識の日常動作が症状をさらに悪化させてしまう可能性があります。ここでは、整形外科医が特に注意を促す5つのNG行動を詳しく解説します。
深いスクワット
膝を深く曲げ込むスクワットは、半月板に非常に強い圧迫力を加える動作です。特に、膝に痛みがある状態で行うと、損傷部分にさらに負担がかかり、断裂を広げてしまう危険性があります。トレーニングとして良かれと思っていても、膝関節を深く曲げながら体重をかける行為は、半月板損傷にとっては大きなリスクとなります。膝を鍛えたい場合は、膝に負担の少ない方法を選ぶ必要があり、自己流でのトレーニングは避けるべきです。
ジャンプ系のエクササイズ
バーピージャンプのように、着地時に膝への衝撃が大きい運動は、半月板損傷を悪化させる典型的な例です。ジャンプからの着地は、自分の体重の何倍もの負荷が膝にかかります。膝の曲げ伸ばしやひねりのコントロールが不十分な状態で行うと、損傷した半月板に直接的なダメージを与えてしまいます。痛みがある状態で無理にジャンプや着地を繰り返すことは、症状を急激に悪化させるリスクが非常に高いため、絶対に行わないようにしましょう。
急停止や方向転換が多いスポーツ
テニスやバスケットボール、サッカーなど、急なストップや素早い方向転換(ピボット動作)を伴うスポーツは、半月板に大きなねじれの力を加えます。膝関節は本来、曲げ伸ばしには強い構造ですが、ひねる動きには非常に弱いという特徴があります。そのため、急停止して体を切り返すような動きは、半月板を損傷させる原因となりやすく、すでに傷めている場合は症状をさらに悪化させる危険な動作と言えます。プレー中に膝の痛みを感じる場合は、すぐに運動を中止することが重要です。
階段や坂道でのダッシュ
トレーニングの一環として行われがちな階段ダッシュや坂道ダッシュも、半月板損傷の疑いがある場合は避けるべきです。特に階段を駆け下りる動作は、平地を歩くときよりもはるかに強い衝撃が膝にかかります。また、膝を深く曲げた状態から体を押し出す動きが連続するため、半月板への圧迫も強くなります。膝の痛みを我慢してこのようなトレーニングを続けることは、損傷を悪化させ、回復を遅らせる原因となるため、中止を検討してください。
長時間の正座やしゃがみ込み
これは運動ではありませんが、日本の生活習慣において非常に重要な注意点です。正座や、床に直接座る、あるいは和式トイレでのしゃがみ込みといった動作は、膝を最大まで深く曲げるため、半月板に持続的な圧力をかけ続けます。特に体重がかかった状態で長時間この姿勢を続けることは、損傷した半月板の状態を悪化させるリスクが極めて高い行為です。日常生活でどうしても避けられない場合は、椅子を使うなど、膝を深く曲げずに済む工夫をすることが大切です。
半月板損傷の治療法とは?知っておきたい選択肢
半月板損傷の治療法は、損傷の程度や場所、年齢、活動レベルなどを考慮して決定されます。基本的には、まず手術をしない保存療法から始めることが一般的です。保存療法では、サポーターで膝を固定したり、リハビリテーションで膝周りの筋力を強化して関節を安定させたりします。しかし、損傷が大きい場合や、ロッキングを繰り返すなど症状が重い場合には、関節鏡を用いた手術療法が選択されることもあります。手術では、損傷した部分を縫い合わせる縫合術や、挟まっている部分を取り除く切除術が行われます。最近では、自身の血液を利用するPRP療法などの再生医療も注目されていますが、保険適用外のため、専門医とよく相談することが必要です。
半月板損傷のサインを見逃さず専門医へ
膝の痛みや引っかかり、腫れといった症状は、半月板が発している重要なSOSサインです。これらのサインを年のせいや一時的なものだと軽視して放置してしまうと、症状が悪化し、将来的には変形性膝関節症へと進行してしまうリスクがあります。特に、今回ご紹介したやってはいけないことを無意識に行っていると、回復を妨げるだけでなく、さらなる損傷を招きかねません。少しでも膝に違iiv感を感じたら、自己判断で様子を見るのではなく、できるだけ早く整形外科を受診し、MRI検査などで正確な診断を受けることが大切です。早期に適切な治療を開始することが、あなたの膝の健康を長く守るための鍵となります。