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INTERVIEW
名医インタビュー
2025.12.26
形成外科
愛知

形成外科の名医【井上 義一先生/藤田医科大学病院】

まさてる散歩〜あなたの街の頼れるクリニック訪問〜

藤田医科大学病院(愛知県豊明市)は、国内でもトップクラスの規模で病院群を運営している大学病院です。特定の付属病院だけでなく、役割の異なる複数病院をネットワーク化し、高度急性期から最先端医療、専門型特化医療まで幅広い診療をカバーしています。 今回は口唇口蓋裂などの先天疾患を中心に、高難易度症例を担当している藤田医科大学 医学部 形成外科 准教授の井上義一先生に、形成外科医を志した経緯や治療への思いまで詳しく伺いました。

ブラックジャックに影響を受け、「人の役に立てる医師」を目指す

     

____先生が医師を目指されたきっかけを教えてください。

小学生の頃に読んだ手塚治虫先生の漫画、『ブラック・ジャック』の影響が大きかったと思います。医師として腕を振るい人々の命が救われていく様子に心を打たれ、「将来は人の役に立つ仕事がしたい」と考えるようになりました。

滋賀県の自然豊かな環境で育ち、動物と触れ合う機会も多かったことから、生命そのものへの関心は幼い頃から持っていました。実家は事業を営んでおり、家業を継ぐ道もありましたが、自分自身の力で道を切り開きたいという思いが強く、医学の道に進むことを決めました。

_____診療科のなかでも、形成外科を選ばれたのはどのような経緯があったのでしょうか。

食道がん手術で有名な北海道の恵佑会札幌病院で学んでいた際に、がんによる食道切除術後の再建手術(失われた食道の代わりに腸を移植し、周囲の血管もつなぐ高度な手術)を、形成外科の先生が執刀していると知りました。
指導してくださっていた非常に優秀な上級医の先生が、再建手術では迷わず形成外科医に執刀を依頼している姿を目の当たりにし、大きな衝撃を受けたのです。

「どれほど優れた外科医でも、難易度の高い再建手術では形成外科の技術が必要になるのか」
その光景が忘れられず、形成外科の緻密さと専門性に強く惹かれ、この道に進むことを決めました。

韓国、欧州からも技術をアップデート。生後間もなくから関わる患者さんを最新手技で支える

 

____現在の専門領域について、どのように取り組まれていますか。 

大学病院では、主に口唇口蓋裂の診療とこの疾患に必要な一連の手術を担当しています。具体的には初回の口唇の手術、顔面骨骨切り(顎変形症)、鼻の手術などです。
口唇口蓋裂は、胎児期に上唇や口蓋が完全に閉じないまま生まれてくる先天性疾患で、出生約500〜700人に1人の割合でみられます。哺乳や発音に影響が出ることもありますが、生後から段階的に行う手術、矯正治療、言語訓練を組み合わせることで、多くのケースで自然な見た目と機能を獲得することが可能です。

患者さんとは生後まもない時期から長期にわたって関わるため、成長に寄り添いながら、必要な段階に応じて治療を組み立てていく分野でもあります。 顔立ちの印象と機能のバランスを整える処置が求められる場面も多く、鼻・顎・口唇に関わる施術などは、美容外科と重なる部分が非常に多いと感じています。

___技術のアップデートについて、特に意識されている点はありますか 。

鼻の形成や骨切りといった分野は、海外のほうが技術革新のスピードが速い側面があります。そのため国内にとどまらず、韓国や欧州の学会にも積極的に参加し、新しい技法を取り入れるようにしています。
皮膚の質感や骨格の特徴は国によって異なりますが、応用できる考え方や手技は多く、日常の診療にも大いに役立っています。形成外科医としての基盤を高めるうえでも、国内外の美容外科の知識と技術は欠かせないと感じています。

患者さんは全国各地から。口唇口蓋裂の高度治療に関する質をさらに高めていく

 

____地域との関わりについて、先生のお考えを教えてください。

当院には地元だけでなく、北海道から九州まで全国各地から患者さんが来院されます。そのため、特定の地域に根ざした診療という意識はあまりありません。
口唇口蓋裂に関する高度な治療をトータルに行える施設が限られていることの表れでもあり、私たちが必要とされている役割の大きさを感じています。
口唇口蓋裂の診療は、先代の教授から長く受け継がれてきた分野です。これまで培ってきた経験と技術を基盤に治療の質をさらに高め、患者さんの満足度につなげていくことを常に意識しています。広い地域から託される治療だからこそ、一人ひとりに丁寧に向き合い続けたいと考えています。

____患者さんと接する際に、心がけていることはありますか。

赤ちゃんの頃から長く診療が続く口唇口蓋裂の患者さん達と向き合うなかで、医師の言葉がご本人やご家族に与える影響の大きさを強く実感してきました。励ますつもりでかけた言葉でも、信頼関係が十分に築けていないと、まったく違う意味で受け取られてしまうこともあります。
そうした経験から、信頼がないまま治療や手術を行うことは、患者さんにとっても医師にとっても良い結果につながらないと強く意識するようになりました。まずは関係性をつくることが、診療の前提だと考えています。

____最後に、この記事をお読みの患者さんへメッセージをお願いします。

手術は患者さんとご家族にとって、人生の中でも大きな節目です。だからこそ、診察やカウンセリングでは十分な時間をかけ、納得して治療に臨んでいただくことを大切したいと思っています。 しかしながら、1日の外来で40-50人の患者さんに対応しないといけないため、実際はなかなか十分な時間が取れていないことも多いと感じています。

せっかく私を選んできてくれたのに、申し訳ないことです。ただ、この状態が今の現実ではありますので私ができることとして、「少しでも迷われる場合は、何度でも来てください」という内容のお話をしています。診察と手術の方針に納得をしていただき、私を信用していただけるようになってから、手術をお受けしています。

<プロフィール>
藤田医科大学病院 形成外科/准教授  井上 義一(いのうえ よしかず)

藤田保健衛生大学(現:藤田医科大学)医学部卒業後、滋賀医科大学第一外科にて研修。その後、恵佑会札幌病院で形成外科の再建手術に触れ、形成外科の道へ。現在は藤田医科大学病院 形成外科准教授として、口唇口蓋裂などの先天疾患を中心に高難易度症例を担当している。

<専門分野>

形成外科 口唇口蓋裂 顎顔面外科 美容外科

<資格>

医学博士 日本形成外科学会認定専門医 日本美容外科学会(JSAPS)認定専門医 形成外科領域指導医 小児形成外科領域指導医医 日本頭蓋顎顔面外科学会専門医

<所属学会>

日本腹膜透析医学会


問い合わせ
0562-93-2111

藤田医科大学病院
公式ホームページ:https://hospital.fujita-hu.ac.jp/

取材日: 2025年12月12日