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【医師監修】側弯症(そくわんしょう)とは?原因・治療法・検査方法まで徹底解説

「側弯症(そくわんしょう)」と聞いても、どんな病気なのかイメージしづらい方は多いかもしれません。とくにお子さんや若い女性に多く見られるこの背骨の疾患は、初期には痛みなどの自覚症状が少なく、気づかないうちに進行してしまうこともあります。「放っておいても大丈夫?」「整形外科と接骨院、どちらに行くべき?」といった疑問を抱える方も少なくありません。
この記事では、整形外科専門医の解説をもとに、側弯症の原因や進行リスク、治療法、検査方法までをわかりやすく解説します。お子さんの健診で「側弯症の可能性があります」と言われた保護者の方も、ぜひ参考にしてください。

側弯症(そくわんしょう)とは?

【背中が捻じ曲がる?】子供や女性に多い『側弯症』って治るの?放置してもいいの?
子どもや若い女性に多く見られる側弯症(そくわんしょう)は、見た目には分かりにくく、初期は気づかれにくい病気です。まずはその基本から整理しましょう。

背骨がS字に曲がる病気

側弯症とは、背骨が本来の真っすぐな状態から横方向に曲がってしまう病気のことを指します。正面から見ると、アルファベットのS字やC字のようなカーブを描いているのが特徴です。この変形は、単なる姿勢の崩れではなく、背骨に構造的な変化が生じてる状態であり、医学的には「脊柱側弯症」とも呼ばれます。見た目に変化があっても痛みがない場合も多く、発見が遅れるケースが少なくありません。

診断基準と定義

側弯症の診断には、背骨の傾きの角度が基準となります。一般的には、正面からレントゲンを撮影し、背骨の傾きが10度以上あると側弯症と診断されます。この傾きを「コブ角」と呼び、医学的な評価にも用いられます。10度未満の軽度な歪みは、姿勢の癖による可能性があり、側弯症とは区別されます。10〜20度ほどの軽度の側弯では日常生活に支障がないことも多いですが、成長期の子どもでは、今後の進行を見越して経過観察が必要です。

側弯症の主な原因は?

側弯症には原因が明確なものと、そうでないものの2種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

症候性側弯症とは

症候性側弯症とは、背骨の異常を引き起こす明確な要因が存在するタイプです。たとえば、先天的に椎骨(背骨の骨)が癒合していたり、骨の形成異常があったりするケースが該当します。また、神経や筋肉の病気によって背骨が引っ張られて変形する場合や、外傷・感染症の後遺症として生じることもあります。
これらは基礎疾患を伴うため、単なる姿勢の問題ではなく、根本原因の診断と対応が求められます。成長とともに変形が進行しやすいため、早期の医療介入が不可欠です。

特発性側弯症とは

特発性側弯症は、明確な原因が見つからないにもかかわらず背骨が曲がってしまうタイプで、側弯症の中でも最も一般的です。とくに思春期前後の成長期に発症しやすく、「思春期特発性側弯症」と呼ばれることもあります。健康な子どもに突然現れることもあり、家族が偶然気づくことが多いのが特徴です。
多くの場合、遺伝的な要素や成長ホルモンの影響が関係していると考えられていますが、正確なメカニズムはいまだ解明されていません。原因が不明なぶん、進行を見逃さないための定期的な観察が大切です。

側弯症の進行リスクと注意点

初期にはほとんど症状が出ない側弯症ですが、進行することで見た目や健康への影響が大きくなります。特に成長期の子どもには注意が必要です。

10代の成長期に注意が必要

側弯症がもっとも進行しやすいのは、身長が急激に伸びる思春期前後の成長期です。10歳前後で側弯が10度以上あると、そこから20度、30度と角度が大きくなっていくリスクがあります。成長に伴う骨の伸長にあわせて、歪みも増幅される傾向があるため、初期の段階での発見と経過観察が非常に重要です。この時期の子どもに対しては、定期的なレントゲン検査を行い、変形の進行を見極める必要があります。進行のスピードには個人差がありますが、成長が止まるまで安心はできません。

放置するとどうなるのか

軽度の側弯であれば日常生活に支障がないことも多いですが、放置して進行すると見た目の左右差が顕著になり、姿勢の悪化や筋肉の偏り、将来的には腰痛や肩こりなどの原因になることがあります。さらに、重度になると胸郭が変形して肺や心臓を圧迫し、呼吸機能や循環器への悪影響を及ぼすこともあります。こうした合併症を防ぐためにも、側弯症は「痛みがないから放っておいていい」というものではなく、専門医による継続的な診察と対応が求められます。

整形外科で行われる側弯症の治療

側弯症の治療は、進行の程度や成長期の有無によって段階的に選択されます。基本は保存療法から始まり、必要に応じて装具や手術が検討されます。

リハビリテーションと生活指導

10〜20度程度の軽度な側弯症に対しては、まずリハビリテーションと日常生活の見直しが基本となります。たとえば、姿勢の改善指導や背筋・体幹を鍛える運動療法などが中心です。特に、成長期においては普段の姿勢や身体の使い方が側弯の進行に影響を及ぼす可能性があるため、定期的に理学療法士の指導を受けることが推奨されます。医学的には「効果が限定的」との報告もあるものの、実臨床では予防的な意味で重視されている治療です。

装具療法(コルセット治療)

側弯の角度が20度を超える場合、特に成長が続いている子どもには「装具療法」が導入されます。これは、コルセットのような装具を1日中装着して背骨の曲がりを抑制する方法で、側弯の進行を予防する効果があります。装着時間は1日18〜23時間が推奨されることもあり、患者や家族の協力が不可欠です。装具は体型や曲がり具合に応じてオーダーメイドで作られ、成長にあわせて随時調整されます。装具療法は、適切な時期に適切な方法で行うことで手術を回避できる可能性もあります。

外科手術

側弯が30度を超え、なおかつ装具による改善が見込めない場合や、変形が急速に進行している場合には、手術が選択肢となります。一般的には「後方矯正固定術」と呼ばれる手術が行われ、背骨に金属のロッドやスクリューを取り付けて湾曲を矯正し、固定します。術後は数ヶ月のリハビリを要するものの、重度の変形や将来的な内臓圧迫を防ぐ意味では非常に有効な手段です。ただし、手術は身体への負担も大きいため、必要性やタイミングについては慎重な判断が求められます。

側弯症の検査方法とは?

側弯症は見た目だけでは判断が難しく、適切な診断には専門的な検査が必要です。初期段階では学校でのスクリーニングがきっかけになることが多く、そこから医療機関で精密検査が行われます。

学校検診でのスクリーニング

多くの子どもが初めて側弯症の可能性を指摘されるのが、学校での定期健康診断です。代表的なのが「前屈検査」と呼ばれるもので、両手を前に出して前屈し、背中の左右の高さや筋肉の盛り上がりを確認します。側弯症があると、背骨のねじれにより肋骨が左右非対称に盛り上がるため、視覚的な左右差が観察されます。また、最近では「モアレ検査」といって、背中に縞模様の光を投影し、立体的な凹凸を視覚的に評価する手法も一部の学校で導入されています。これらはあくまでスクリーニングであり、最終的な診断は医療機関で行います。

病院で行うレントゲン検査

学校検診などで「側弯症の疑い」と指摘された場合は、整形外科での精密検査が必要です。診断の中心となるのがレントゲン撮影です。立位で背骨全体を写し、前後・左右からの角度を評価することで、側弯の有無やその程度(コブ角)を測定します。また、ねじれの有無も併せて確認されるため、単なる横方向の曲がりだけでなく、三次元的な変形があるかどうかも判断できます。進行の程度や成長のタイミングに応じて、一定期間ごとのレントゲン検査を繰り返し行い、経過を観察していくことになります。

側弯症と接骨院の関係性

近年では、側弯症の相談先として接骨院を検討する方もいますが、正確な診断や根本的な治療を行う場としては適切とは言えません。

接骨院は、捻挫や打撲、筋肉・関節の炎症など、比較的軽度な外傷に対する施術を主とする施設です。一方、側弯症は骨格そのものの変形であり、医学的には整形外科の専門領域です。接骨院ではレントゲンなどの画像診断ができないため、症状の正確な評価や進行度の判断ができません。
特に成長期の子どもにとっては、適切な診断と治療方針の選定が将来の体型や健康に大きく関わるため、まずは整形外科を受診することが重要です。

まとめ

側弯症は、特に成長期の子どもや若い女性に見られる背骨の変形であり、初期は自覚症状が少ないため、見逃されやすい疾患です。軽度であっても成長とともに進行するリスクがあるため、学校検診や家族の気づきによる早期発見が非常に重要です。
治療法は、症状の進行度や年齢に応じて段階的に選択されます。初期にはリハビリや生活指導、中等度では装具療法、そして重度の場合は手術療法が検討されるなど、整形外科における専門的な判断が不可欠です。
見た目だけで判断せず、定期的な検査と専門医の診断を受けることで、将来の健康や生活の質を守ることができます。少しでも気になる症状があれば、早めの受診を検討しましょう。