【医師監修】猫背の治し方は?巻き肩との違いや姿勢改善の方法を紹介

姿勢が悪いと感じたとき、よく耳にする「猫背」や「巻き肩」という言葉。しかし実際にそれぞれがどのような状態を指し、どう違うのかを正しく理解している方は少ないのではないでしょうか。見た目の印象だけでなく、猫背や巻き肩は肩こりや腰痛だけでなく、消化不良や呼吸のしづらさ、さらには気分の落ち込みといった心身の不調にも関わってくる重要な姿勢の問題です。
この記事では、猫背と巻き肩の違いや原因、そして改善するための具体的な方法までをわかりやすく解説します。姿勢を見直し、日常生活の質を向上させたい方はぜひ参考にしてください。
猫背と巻き肩の違いを理解しよう
【徹底解説!】もう困らない!猫背と巻き肩の違いと治し方を分かりやすく説明します!
姿勢の乱れとして知られる猫背と巻き肩は、似ているようで実は異なるものです。ここでは、それぞれの特徴と構造的な違いを理解しましょう。
猫背とは?
猫背とは、胸椎(胸の背骨)が過度に後方へ湾曲した状態を指します。人間の背骨は本来S字カーブを描いており、腰椎は前方に、胸椎は後方に、頸椎は再び前方に湾曲しています。この自然なカーブが崩れ、胸椎が過度に丸くなることで背中全体が後ろに弧を描き、いわゆる「背中が丸まった姿勢」になります。
巻き肩とは?
巻き肩は、体を横から見たときに肩の位置が身体の側面よりも前に出てしまっている状態をいいます。巻き肩は猫背と併発することが多いですが、必ずしも猫背の人すべてが巻き肩であるとは限りません。肩の前方移動は見た目の印象だけでなく、肩関節や首、腕にかけての筋肉や神経にも負担をかけることがあります。
猫背と巻き肩の関係性
猫背と巻き肩はしばしばセットで語られますが、原因や身体への影響には違いがあります。猫背になると背中が丸まり、それに伴って肩も前に出やすくなるため、巻き肩を引き起こしやすいのです。一方で、筋肉のアンバランスによって巻き肩が単独で起こることもあり、その場合は背骨自体は正常な湾曲を保っていることもあります。両者を正確に区別し、それぞれに合ったアプローチを取ることが、姿勢改善には大切です。
猫背・巻き肩を引き起こす主な原因
猫背や巻き肩は加齢や体質だけでなく、日常の何気ない習慣によって引き起こされることが多くあります。ここでは代表的な3つの原因について詳しく見ていきましょう。
長時間のデスクワークやスマホ操作
現代人の生活において最も大きな要因といえるのが、長時間にわたるデスクワークやスマートフォンの使用です。画面を見る姿勢では頭が前に出やすくなり、自然と肩も内側に入ってしまいます。この姿勢が続くことで首や背中の筋肉に負担がかかり、巻き肩や猫背の状態が固定化されてしまうのです。特にノートパソコンやタブレットの使用では視線が下がりやすく、知らぬ間に姿勢が崩れていることが多いため、日常的に意識して見直すことが大切です。
体幹・背筋の筋力低下
姿勢を支えるためには、腹筋や背筋をはじめとする体幹の筋力が欠かせません。ところが、運動不足が続くとこれらの筋肉が弱まり、正しい姿勢を維持することが難しくなります。特に骨盤を立てて背筋を伸ばすには、インナーマッスルと呼ばれる深層の筋肉群の働きが重要です。筋力が衰えることで骨盤が後傾しやすくなり、結果的に背中が丸まり猫背の状態になります。筋力低下は見た目の変化だけでなく、身体の不調を招く大きな要因になります。
習慣化した誤った姿勢
猫背や巻き肩は、気づかないうちに習慣化された誤った姿勢によっても生じます。たとえば椅子にもたれかかったり、背もたれに頼って座る癖があると、骨盤が後ろに倒れ、自然と背中が丸くなります。また、立っているときに片足に体重をかけたり、鞄をいつも同じ側で持つといった日常の癖も、筋肉や骨格のバランスを崩す原因になります。こうした姿勢の癖は長年かけて身についているため、自分では気づきにくく、改善にも時間がかかりますが、まずは正しい姿勢を「知る」ことから始めましょう。
猫背による体への影響
猫背は見た目の悪さだけでなく、全身にさまざまな不調を引き起こします。ここでは、猫背による体への影響について見ていきましょう。
骨盤の傾きと姿勢の悪化
猫背が起こる背景には、骨盤の後傾があります。骨盤はもともと円状の構造をしており、わずかに前傾しているのが理想的な状態です。しかし、筋力低下や長時間の座位によって骨盤が後ろに傾くと、腰椎の前弯(前方向へのカーブ)が失われ、背骨全体がCの字型に丸まってしまいます。このような骨格の変化により、自然と猫背の姿勢が固定化し、身体全体のバランスが崩れていくのです。
消化不良や呼吸困難など内臓への影響
猫背になると腹部が圧迫され、腹圧が高まります。その結果、食後に消化不良や胃の不快感を覚えることが多くなるのです。また、呼吸を担う横隔膜の動きが制限されしまう状態になるため、深い呼吸がしづらくなり、浅く速い呼吸が癖づいてしまう傾向にあります。こうした変化は、内臓機能の低下や慢性的な倦怠感を引き起こす原因にもつながりかねません。
手のしびれや首・肩のこりの原因に
猫背によって巻き肩が併発すると、腕や首、肩の筋肉や神経に継続的な負担がかかります。特に、肩から手先へと伸びる神経が牽引されたり、通り道が狭くなることで圧迫され、手のしびれを訴える人も少なくありません。また、肩甲骨周辺の筋肉が常に緊張することで慢性的な肩こりや首の痛みにつながり、日常生活の中での集中力や睡眠の質にも悪影響を及ぼします。
姿勢とメンタルの関係
姿勢は心の状態とも深く結びついています。人は落ち込んだときに自然と背中を丸める傾向がありますが、逆に猫背の状態が続くことで気持ちまで沈んでしまうという研究結果もあります。つまり、身体の姿勢がネガティブな感情を引き起こす引き金になる可能性があるのです。日々の生活で無意識に背中を丸めてしまうことが、知らず知らずのうちに心の不調を招いているケースも少なくありません。
猫背・巻き肩の改善に必要なポイント
猫背や巻き肩を根本から改善するには、筋力の強化だけでなく骨格の正しい位置を取り戻す意識と習慣が大切です。日常生活で意識すべき3つのポイントを紹介します。
骨盤を立てる意識が第一歩
猫背改善の土台となるのが「骨盤の正しい傾き」です。骨盤が後ろに傾くことで背骨のカーブが崩れ、結果として猫背が定着してしまいます。まずは座るときや立つときに、骨盤を起こす意識を持つことから始めましょう。目安として、座った際にお尻の左右にある坐骨をしっかり感じられる姿勢を取ることが大切です。骨盤が立つと、自然と背筋も伸びやすくなり、肩の位置も後方に戻ってきます。骨盤の傾きを意識するだけで、姿勢全体にポジティブな変化が現れます。
背骨の柔軟性を取り戻すストレッチ
背骨は小さな椎骨が連なってできており、本来はそれぞれが滑らかに動くことで柔軟な身体の動きを可能にしています。しかし、運動不足や長時間同じ姿勢を続けることで関節の可動域が狭くなり、猫背が固定化されてしまうのです。そこでおすすめなのが、背中を丸めたり反らせたりするストレッチです。たとえば、背中を丸めてから大きく反る「キャット&カウ」などの動きは、背骨の柔軟性を高め、姿勢改善につながるでしょう。
正しい姿勢は「肋骨の下を前に出す」こと
多くの人が「胸を張る」ことで姿勢を正そうとしますが、実はそれよりも効果的なのが「肋骨の下端を前に出す」意識です。骨盤を立てた状態で肋骨の一番下を前方に押し出すようにすると、自然と胸が開き、肩が後ろに引かれるため、巻き肩も同時に改善されます。無理に胸を張ると背中が反りすぎたり肩が上がったりして逆効果になることもあるため、このポイントは重要です。毎日の姿勢意識の中に、ぜひ取り入れてみてください。
猫背・巻き肩を根本から改善しよう
猫背や巻き肩は、ただ見た目が悪くなるだけではなく、体のあちこちに不調を引き起こします。肩こりや腰痛、手のしびれといった症状だけでなく、消化不良や息苦しさ、気分の落ち込みなど、思わぬところにまで影響が出ることもあります。でも、だからこそ、ちょっとした意識と習慣の見直しがとても大切です。骨盤をしっかり立てて、肋骨の下を前に出す。背骨を柔らかく動かすストレッチを日常に取り入れる。それだけでも、体は少しずつ正しい位置に戻っていきます。大切なのは「無理なく続けられること」。今の姿勢を見直すところから、心と体がラクになる第一歩を踏み出してみませんか。