お問い合わせ
COLUMN
コラム

【医師監修】関節リウマチとは?
整形外科医が語る診断・治療・生活のヒントを紹介

関節の腫れや痛み、朝のこわばり…。それが単なる疲れや年齢のせいではなく、「関節リウマチ」という病気のサインかもしれません。整形外科を訪れる患者の中には、「関節リウマチは治るのか?」「診断がつくまでにどんな検査をするのか?」といった疑問を抱える方が多くいます。
本記事では、関節リウマチについて、原因や症状の出やすい部位、診断方法、治療の選択肢、そして「治るのかどうか」という多くの人が気になるテーマについて、わかりやすくご紹介します。

関節リウマチとは?

関節リウマチは名前は知られていても、その正体や仕組みについて正確に理解している人は少ないかもしれません。まずは、この病気の本質に迫っていきましょう。

自己免疫疾患としての関節リウマチ

関節リウマチは「自己免疫疾患」と呼ばれる病気のひとつです。本来は細菌やウイルスなど外敵を攻撃するはずの免疫機能が、なぜか自分の体を敵とみなして攻撃してしまうのが自己免疫疾患の特徴。関節リウマチではこの誤作動によって、体の関節が慢性的に炎症を起こすようになります。免疫の暴走は制御が難しく、放置すると関節の腫れや痛みが進行して、日常生活にも支障をきたすようになります。

関節内の滑膜が攻撃される仕組み

関節リウマチでは、関節の内側にある「滑膜(かつまく)」と呼ばれる組織が、免疫の標的になります。滑膜は関節の潤滑を保ち、スムーズな動きを支える重要な組織です。しかし、自己免疫の異常によってこの滑膜が炎症を起こすと、関節に痛みや腫れが生じ、炎症が長期化すると軟骨や骨の破壊へとつながります。これは、炎症によって滑膜が異常増殖し、「パンヌス」と呼ばれる組織に変化して、関節の軟骨や骨を侵食していくことが原因です。そのため、滑膜炎の段階で治療を開始することが極めて重要です。病気の進行を止めるには、早期発見と適切な治療が欠かせません。

関節リウマチが起こりやすい部位

関節リウマチは全身の関節に影響を及ぼす可能性がありますが、特に症状が出やすい部位には一定の傾向があります。ここでは、関節リウマチの特徴を詳しく見ていきましょう。

初期症状が出やすい部位

関節リウマチの初期症状は、手指や足指などの小さな関節に現れることが多いとされています。特に、朝起きたときに感じる手のこわばりや、軽い違和感が典型的です。この段階で異変に気づき、早めに整形外科を受診することで、関節のダメージを最小限に抑えることが可能になります。見逃しがちな初期サインを正しく理解することが、病気と上手に向き合う第一歩になります。

症状が進行しやすい大きな関節

関節リウマチが進行すると、膝や肩、肘、股関節といった大きな関節にも症状が及びます。これらの関節は日常動作に関わる頻度が高いため、痛みや腫れが強くなると、歩行や動作に大きな支障をきたします。特に膝関節の腫れや痛みは、階段の昇降や長時間の立ち仕事に影響しやすく、生活の質(QOL)を大きく低下させる要因となります。

整形外科での診断方法

関節リウマチの診断には、症状の観察だけでなく、医学的な検査による裏付けが欠かせません。 一般的に、関節リウマチの薬物治療の中心はリウマチ内科(膠原病内科)で行われることが多く、整形外科では診断の初期対応や画像診断、関節の機能評価、必要に応じた手術的介入などが主な役割となります。患者さんの状態によっては、両科が連携して診療にあたることも少なくありません。

朝のこわばりが疑いのサイン

関節リウマチを疑う初期の症状として、「朝の手のこわばり」がよく知られています。特に30分以上続く手の動かしづらさは、典型的なサインのひとつ。この症状が見られた場合、整形外科ではリウマチを疑い、さらに詳しい検査を行います。こわばりは一時的な不調とも捉えられやすいため、見過ごさず早期に受診することが重要です。

血液検査と臨床判断の併用

整形外科では、疑わしい症状がある場合に「抗CCP抗体」や「リウマトイド因子(RF)」などの血液検査を行い、関節リウマチの可能性を探ります。これらの数値が陽性であれば診断が確定しやすくなりますが、実は陰性であっても関節リウマチであるケースも存在します。そのため、症状の出方や関節の腫れ具合などを総合的に評価し、医師が臨床的に判断することもあります。特に近年では整形外科でも積極的に超音波を使った検査を行い、関節に炎症が起きていないかどうかを調べることなども行っています。血液検査だけに頼らず、医師との対話と診察を大切にしましょう。

関節リウマチの治療法

関節リウマチの治療は、単に痛みを取るだけではなく、将来的な関節の変形を防ぐという意味でも早期の対応が求められます。ここでは、主な治療法を紹介します。

ステロイドと免疫抑制剤の役割

関節リウマチの基本的な治療は、免疫の働きを抑えることにあります。古くから用いられてきたステロイドは、免疫の暴走を抑え、関節の炎症を和らげる役割を担っています。しかし、副作用も多く報告される薬剤のため、使用には注意が必要です。 近年では免疫抑制剤が進化し、関節の炎症を効果的に抑制することができる薬が使われるようになってきました。炎症による関節の破壊を防ぐには、次にお話しするメトトレキサートなどの薬を早期に導入することが重要と近年では考えられるようになってきています。

治療の中心となるメトトレキサート

現在、関節リウマチの治療で最もよく使用されている薬の一つが「メトトレキサート」です。これは免疫の異常な活動を効果的に抑える薬で、多くの患者にとって初期治療の第一選択肢となっています。整形外科の現場でも「リウマチ治療の金メダル」と称されるほど評価されており、適切に使用することで関節の破壊を食い止め、寛解を目指す治療を進めることができます。

関節リウマチは治るのか?

「関節リウマチは治るのか?」という問いは、多くの患者さんが最も気にするポイントです。ここでは「完治」と「寛解」の違いを見ていきましょう。

完治と寛解の違い

関節リウマチは、現時点では「完治する病気」ではありません。完治とは、治療をしなくても病気が再発せず、完全に消失した状態を指しますが、関節リウマチでは免疫機構の異常が根本的に修正されるわけではないため、完治とは言いがたいのが実情です。一方で「寛解」とは、薬の力で症状をコントロールし、痛みや腫れが日常生活に支障をきたさないレベルまで落ち着いた状態を指します。最終的には、薬剤を中止しても症状が再燃しない「治癒的状態」に入る患者も一部存在します。そのような状態になるためにも、発症初期から積極的にメトトレキサートを中心とした炎症を抑制する治療を導入する必要があります。

症状のない生活を目指すアプローチ

寛解を長期間維持することで、患者は「症状のない生活」に限りなく近づくことができます。実際、適切な薬物療法を続けていれば、仕事や家事などを通常通りこなせる人も多く存在します。重要なのは、関節に炎症や変形が出る前の段階で治療を開始し、継続的に医師の指導のもとでコントロールしていくことです。治すというより「コントロールして共に生きる」病気だと捉えるのが現実的です。

関節リウマチを早期発見するために

導入文:関節リウマチの早期発見・早期治療は、将来的な関節の機能障害を防ぐ上で非常に重要です。とくに発症リスクが高いとされる人にとっては、日頃の意識と行動が予後を大きく左右します。

家族歴のある人が気をつけたいポイント

関節リウマチには「遺伝的な傾向」があるとされており、家族にリウマチ患者がいる場合、そのリスクが高まると考えられています。ただし、遺伝だけでなく生活環境や体調の変化など複数の要因が重なることで発症に至るため、「家族がリウマチだから必ず発症する」とは限りません。とはいえ、関節の違和感や朝のこわばりなど、初期のサインに敏感になることは非常に大切です。

早期の整形外科受診のすすめ

少しでも気になる症状がある場合は、早めに整形外科を受診することが何よりの予防策です。「ただの疲れだろう」「年齢のせいかも」と自己判断して放置すると、関節の破壊が進んでしまう恐れがあります。特に、家族にリウマチの既往がある方は、早期に医師と相談することで、将来の重症化を防ぐことができます。症状の小さなサインを見逃さない意識が、未来の健康につながります。

関節リウマチと向き合うには

関節リウマチは、決して珍しい病気ではありませんが、早期に気づいて行動に移すことで、進行を抑え、日常生活を大きく損なわずに過ごすことが可能です。自己免疫疾患としての性質から、完治が難しい病気ではありますが、「寛解」という目標をもって治療を続ければ、痛みのない生活を実現することも十分に可能です。手のこわばりや関節の違和感を覚えたら、無理に我慢せず整形外科で相談してみてください。家族歴がある方は特に注意を払い、自分の体としっかり向き合っていくことが、健康を守る第一歩となります。