神経難病の名医
【佐藤眞也先生/藤崎メディカルクリニック】

福岡市早良区藤崎、地下鉄空港線「藤崎」駅から徒歩1分の場所に位置する「藤崎メディカルクリニック」。院長の佐藤眞也先生は、脳神経内科を専門としながら、在宅医療にも積極的に取り組まれています。その背景には、浪人時代に直面したご家族の難病と闘病経験がありました。今回は佐藤先生に、医師を目指した経緯や脳神経内科診療の詳細、地域の患者さまとの向き合い方についてお話を伺いました。
父の「難病」で急転、医師を志す
____先生が医師を目指したきっかけについて教えていただけますか?
私は高校時代、宇宙関連の仕事に就きたいと考え、大学の工学部への進学を目指していました。地元の鹿児島を離れ、福岡で1年目の浪人生活を送っていた12月のある朝、鹿児島の母から突如電話がありました。それは、父がALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症したという知らせでした。ALSといえば宇宙物理学者のスティーヴン・ホーキング博士と同じ病気。進行すると手足が動かせなくなり、人工呼吸器の助けがないと呼吸もできなくなる難病中の難病です。すぐに事の重大さを理解しました。
父の病気が転機となって、急遽進路を変更し、鹿児島大学の医学部へ進学することを決心しました。福岡でセンター試験を受けた直後に実家のある鹿児島に戻り、そこから初めて入試の過去問を解きはじめるようなバタバタの状況でした。今振り返ってもよく合格できたなと思います。
____脳神経内科を専門とされ、開業に至った経緯について教えてください。
思いもかけなかった父の病気との出会いから、神経難病で苦しむ患者さんをみたいという気持ちは医学部入学当初から一貫していました。研修医時代も、その後の医師としてのキャリアの中でも、その思いが揺らぐことはありませんでした。
研究分野にも興味があったのですが、それ以上に「在宅で神経難病と闘っている患者さんやご家族を支えたい」という気持ちが強く、在宅医療にも対応できるクリニックを新規開業しました。私自身も父が母とともに在宅で闘病生活を送る姿をつぶさに見てきたので、同じような病気で困っている患者さんやご家族の一助になれたら、という思いでした。
相談しやすい「かかりつけ医」を目指す
____先生のクリニックは内科・脳神経内科・呼吸器内科と幅広いですが、どのような思いで診療にあたっていますか?
地域の皆さまが抱えるさまざまな健康問題について、気軽に相談してもらえる「かかりつけ医」でありたいと思っています。私の専門分野である神経難病の患者さんはもちろんのこと、かぜや生活習慣病といった日常的な内科疾患から、咳や息切れといった呼吸器症状まで、安心して頼っていただきたいです。
診断が難しい患者さんや、高度な検査や治療を要する患者さんについては、近隣の医療機関と密に連携を取りながら切れ目のない最適な医療を提供するように努めています。また、歩行障害などで通院が困難となった患者さんに対しては、住み慣れた地域で引き続き過ごしていただけるよう、訪問診療や往診も行っています。
____先生のクリニックを神経系の症状で受診した場合、どのような流れになるのでしょうか?
まず「どのような症状でいつからお困りなのか」といった主訴を詳細にお聞きします。主訴を含めた問診の内容に基づいて、一般的な内科的診察に加え、必要に応じて脳神経内科としての専門的な診察を行い、からだのどこに異常があるのか(病変部位)、どのような原因が考えられるか(病因)について暫定的な診断を行います。私はこの神経診断学の基本となるプロセスを重視しています。その上で、必要な検査を実施し、最終的な診断と適切な治療につなげていきます。
____医師としてやりがいを感じる瞬間は、どんな時ですか?
診断や治療を通じて、患者さんの状態が良くなることが一番です。患者さんから、安心しました、有難うございました、といった言葉をかけていただいたときには、まさに医師冥利に尽きると感じます。
父のALSによって進路を変えた当初から、私は「父のような難病で苦しむ患者さんを治療できる医師になる、いや、ならなければいけない」という強い使命感を抱いていました。私自身がこれまで多くの方々に支えられながら、いち脳神経内科医として研鑽を積み、クリニックを新規開業することができました。そして、日々の外来診療や在宅医療を通じて、地域の患者さんを患者さん自身の生活の場に近いところで支えることを第一として努めてまいりました。夢と呼ぶには切実すぎる思いでしたが、今思い返せば、若かりしころの自分との約束をこのようなかたちで実践できていることは、とても有難いことだと感じずにはいられません。
人生の転機を見届けてくれた場所「福岡」で貢献したい
____日々の診療で、患者さまと向き合う際に心がけていることは何ですか?
ほとんどの患者さんが何らかの不安を抱えて来院されます。その不安を取り除くことが、適切な診断と治療にとって不可欠です。加えて、患者さんが「何を求めて当院に来てくださったのか」という患者さん自身のニーズにも意識を向けるように心がけています。
患者さんが、最初から不安や悩みのすべてを話してくれるとは限りません。しかし、診療を重ねるうちに「こういうことで困っているのだな」「健康上こういうことを望んでいるのだな」ということが伝わってきます。患者さんのゴールが分かれば、医師である私がそこに向かって動く、そんなイメージで取り組んでいます。
____先生は福岡市で開業されていますが、地域への思いについて聞かせてください。
福岡は私が浪人時代を過ごし、その後も九州大学の大学院で博士号を取得するために移り住んだ思い入れのある場所です。当院の副院長として呼吸器、感染症、アレルギーの専門的診療を担当している妻と出会ったのも、ここ福岡でした。福岡の人たちは接しやすくて情に厚い方が多く、街の雰囲気も温かくとても住みやすいところです。福岡は私の人生の転機を見届けてくれた場所でもあるので、これからもこの地域の医療に貢献したいと思っています。
____最後に、この記事をお読みの患者さまへメッセージをお願いします。
心身ともに健康であることは、人生を豊かなものにするための基盤になります。しかしながら、からだに不具合を生じ、辛い思いをしたり途方に暮れたりすることがあります。かかりつけ医が果たすべき役割のひとつは、患者さんやご家族の辛い思いを親身に受け止め、住み慣れた地域で最適な医療や介護を受けられるように道筋をつけていくことにあると考えます。
頭痛、めまい、手足のしびれなど、からだに異変を感じたときはいつでもご来院ください。皆さまのかかりつけの内科医として、健康にかかわる問題に幅広く対応できるよう取り組んでまいります。

院長 佐藤 眞也(さとう しんや)
鹿児島県の高校を卒業後、福岡での浪人中に父がALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、これを契機に医師を志す。2006年に鹿児島大学医学部を卒業後、倉敷中央病院での臨床研修を経て、九州大学大学院にて医学博士号を取得。2016年に福岡市早良区に「藤崎メディカルクリニック」を新規開院。地域のかかりつけ医として、一般内科のみならず、脳神経内科と呼吸器内科の専門的診療まで対応し、在宅医療にも取り組んでいる。
内科 脳神経内科
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医 日本神経学会神経内科専門医 難病指定医 認知症サポート医 医学博士(九州大学)
日本内科学会 日本神経学会 日本神経免疫学会 日本頭痛学会
問い合わせ
092-407-0315
藤崎メディカルクリニック
公式ホームページ:https://www.fujisakiclinic.com/
取材日: 2025年6月3日