家族の笑顔を守る内科診療の名医
【藤堂紗織先生/Alohaさおり自由が丘クリニック】

東急東横線の自由が丘駅から徒歩5分の場所に位置する「Alohaさおり自由が丘クリニック」。院長を務めるのは、やわらかな笑顔が印象的な藤堂紗織(とうどうさおり)先生です。子どもからご年配の方まで家族丸ごと受け入れる「ホームドクタ―」として、一般内科診療、皮膚科診療を提供していらっしゃいます。今回は藤堂先生に、自由が丘で開業に至った経緯や診療にかける思い、地域の患者さまとの温かいエピソードなどをお伺いしました。
「患者を助けたい」友人の一言とサッカーの賭けが、人生を変えた
____藤堂先生が医師を目指そうと思われたきっかけについて教えてください。
幼稚園の頃には医師になることを決めていました。きっかけは糖尿病を患っていた祖父です。祖父は病気の悪化で透析が必要になり、目も見えなくなっていたのです。私はおじいちゃんっ子でしたので、「私がお医者さんになって目を治すね」と約束し、初志貫徹で医師になりました。祖父との約束を果たしたい一心で、研修後は透析治療を中心としたクリニックに入職し、院長として10年ほど勤務しました。
____そこから開業に至った背景について教えてください。
私はいわゆる雇われ院長でした。「自分が良いと思う医療を提供できない」ことにもどかしさを感じていました。独立への道も考えましたが、実家は医師家系ではなくサポートも見込めなかったので、半ば諦めていたのです。
そんな折、私と同じく医師家系ではない友人がクリニックを開業しました。
「私も開業したいけれど、ゼロからのスタートは怖い」とこぼしたのです。そんな私に対し、彼は核心を突く一言を投げかけてくれました。
「自分を頼って来てくれる患者さんを、ベストを尽くして助けたいとは思わないの?」
その言葉にハッとしたのです。「祖父を、病気で苦しんでいる人を助けたい気持ちがあるなら、そのまま走り抜くべきじゃないか」と気づいた瞬間でした。
それでも私はすぐに決断することはできなかったのです。そんな私に友人が提案してきたのは意外な方法でした。
「じゃあ賭けをしよう。今夜のサッカーの試合で日本が勝ったら開業すること」
彼が提案してきた試合は、日本が9割負けると予想された対コロンビア戦。「どうせ日本は負けるから、私の勝ちに違いない」と、彼の提案を受けたのです。ところが、予想に反し、勝ったのは日本。「約束だよ」と彼は開業コンサルタントを手配し、あれよあれよという間に開業が決まりました。
____開業してからも波乱万丈でしたね。
実は耳鼻科医と内科医は領域が重なることもあり、あまり相性がよくありません。現在入居しているビルは、当初は耳鼻科クリニックが入ることが決まっていました。案の定、耳鼻科の先生に嫌な顔をされてしまい、私の方から入居をお断りしました。
すると、ビルのオーナーさんが私のところに状況を把握するためにやってきました。正直に、開業への素直な思いをお伝えしたのです。思いがけなくも、オーナーさんからは「あなたのような熱意のある医師に入ってもらいたい」と言っていただきました。結局、そのビルには当院が入り、耳鼻科の先生が別の場所に移られることになったのです。例の試合の日から開業に至るまで、とにかく怒涛の日々でしたね。
「診断力のカギは“引き出し”の数」 磨き続ける観察力と知識
____内科専門医として、先生がとくに重視されていることはどんなことでしょうか?
あらゆる病気の臨床像を理解するために、私は「可能な限り多くの引き出しを作っておく」ことを大切にしていますね。引き出しは多ければ多いほど、より正確な診断につながります。そのため、学会への参加や論文リサーチを重ね、医学知識を日々アップデートしています。
診療では、患者さまが診察室に入ってこられた瞬間から、歩き方や表情、顔色などを細かく観察し、頭の中の引き出しを一斉に開きます。例えば頭痛の場合は、「いつから症状があるのか」「どのような種類の痛みか」「どんなタイミングで痛むのか」などを丁寧に聞き取り、必要に応じて検査も行います。こうして病気の可能性が低い引き出しを次々と閉じていき、最終的に残った引き出しに貼られたラベルが、その患者さまの病名となるのです。
____医師としてやりがいを感じるのは、どのような瞬間でしょうか。
緊急性の高い病気を発見できた瞬間は、医師として特に心に残ります。
一見元気そうに徒歩で来院された患者さまが、実は深刻な症状を抱えていることもあります。入院後に回復され、「元気になりました!」と笑顔で声をかけてくださったり、ご家族の方がわざわざお礼に訪れてくださったりすると、本当に嬉しく感じます。そんな時、「開業までの苦労も、この瞬間のためだった」と胸が熱くなります。
____患者さまと向き合う際は、どのようなことを心がけていますか?
治るまでのおおよその期間や症状への具体的な対応をお伝えし、治療の道筋を明確にすることで、患者さまは安心されるようです。診療中は、声のトーンを少し高めにして優しく響くように心がけ、リラックスできる雰囲気づくりにも努めています。
また、場合によっては女性の患者さまを下の名前でお呼びすることもあります。子育て中の女性の中には、外では夫の姓で呼ばれ、子ども関係では「お母さん」と呼ばれ、自分の名前を呼ばれる機会がないと感じている方も少なくありません。そうした方には、あえて下の名前でお声がけしています。診療は人と人とのやり取りです。目の前の患者さまの心に寄り添えるよう、細やかな部分にも気を配っています。
ゼロから始まったクリニックが、地域に愛される場所になるまで
____開業6年目となった今、地域の患者さまへどんな想いを感じていらっしゃいますか?
「調子が悪いときは、とりあえずあのクリニックに行こう」と思っていただける存在でありたい、その一心でがむしゃらに走ってきました。ありがたいことに、患者さまからは「ここに来ればいつも先生がいるから安心できる」と言っていただけるようになり、少しでも理想に近づけているなら嬉しく思います。
開業当初は地盤もコネもなく、本当にゼロからのスタートでした。それが今では、「恥ずかしいけど先生には聞いてもらいたくて」と打ち明けてくださったり、休診日を残念がってくださったりする患者さまがいるほどに。地域の皆さまに愛されるクリニックでいられることが、何よりの喜びです。人を助けたいと医師を志しましたが、振り返れば、本当に助けられているのは私のほうかもしれません。
____最後に、この記事をお読みの患者さまへメッセージをお願いします。
子育て世代の患者さまの中には、「子どもは病院に連れて行くけれど、自分は診てもらう時間がない」と感じている方も多いかもしれません。ですが、大人だって体調を崩すことがあります。病気だった祖父をそばで見守った経験からも、大人が元気でなければ、子どもの笑顔も曇ってしまうと強く感じます。
体がつらいときは、どうかお子さまと一緒に当院へいらしてください。院内感染を防ぐための動線設計や、予約システムの導入による待ち時間の短縮など、安心して受診していただける環境を整えています。ご家族みんなの笑顔を守るために、私の力が少しでもお役に立てれば幸いです。

院長 藤堂紗織(とうどう さおり)
日本医科大学を卒業後、日本医科大学付属武蔵小杉病院を経て、善仁会丸子クリニックで院長に就任。2019年に目黒区自由が丘にて「Alohaさおり自由が丘クリニック」を開業し、現在に至る。
内科
日本内科学会認定内科医
日本透析医学会 日本腎臓学会 点滴療法研究会 日本美容皮膚科学会
問い合わせ
03-6459-5068
Alohaさおり自由が丘クリニック
公式ホームページ:https://aloha-saori-jiyugaoka-cl.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/alohasaori.cl/
取材日: 2025年4月25日