地域医療の名医
【梶原愛莉砂先生/津かじわらクリニック】

三重県津市にある「津かじわらクリニック」。副院長の梶原愛莉砂先生は、形成外科・美容皮膚科を専門に診ていらっしゃいます。泌尿器科・皮膚科専門医である夫の梶原進也院長と共に、地域医療に深く貢献されています。今回の取材では、愛莉砂先生が特に力を入れている地域医療の重要性や、患者さまへの思いについてお話を伺いました。
「患者を助けてほしい」亡き父の遺志を継ぎ、地域医療に挑む
____先生が医師を目指したきっかけについて教えてください。
15歳の時に父をがんで亡くしました。2年にわたる闘病生活を通じ、医療の無力さを痛感したのです。当初は医師になろうとは思えませんでした。しかし、ある先輩医師から「悔しい思いが医学を進歩させる」と教えていただき、自分の経験を生かしたいと考えるようになりました。
そんな時、私の頭に何度も浮かんだのは内科医だった父が生前語っていた言葉です。
「どんな職業でもいいから、自分がのこしていく患者さまを助ける仕事についてほしい」
父の遺志を継げるならばと、医師を目指す決意を固めました。
____クリニックを開業された経緯について教えてください。
結婚後しばらくは夫婦それぞれ外科医として病院勤務をしていました。勤務していた三重県津市には泌尿器科クリニックが少なく、高齢化が進む地域です。そのような地域では、地域医療の需要が高いのではないかと判断し、開業を考えるようになりました。
私が専攻を決めた当時、三重大学には形成外科がなかったこともあり、三重県内には形成外科のある病院が限られていました。そんな中、後継者を探しているクリニックがあるというお話をいただいたのです。形成外科医である私の技術も活かせると判断したことから、開業を決意しました。最新の医療知識を保ちつつ、夫婦で地域医療に貢献できるのではないかと考えたのです。
地域密着型の患者さまが安心して通えるクリニックを目指して
____先生が患者さまと向き合う際に大切にしていることを教えていただけますか?
患者さまにご自身の病気や治療の理解を深めていただくことです。クリニックは患者さまの日常に最も近い医療機関です。ただ薬を処方するだけでなく、その薬がなぜ必要で、どのような効果を持つのかをきちんと説明することを大切にしています。その結果、治療を前向きに捉えていただくことに繋がり、治療効果にも大きく関わると考えています。
患者さまの中には、処方された薬の意味や病状について十分に理解しないまま服用している方もいらっしゃいます。だからこそ、私たちは限られた診療時間の中で、説明や対話にできる限り時間を割き、納得と安心をもって治療に臨んでいただけるよう努めています。このように「理解を育てる診療」が、より良い医療の第一歩だと感じています。
____クリニックの特徴を教えてください。
当院の大きな特徴のひとつは、院内薬局を併設している点にあります。近年は院外処方が主流です。しかし、ご高齢の患者さまも多く、体力的な負担を考えると、移動せずに診療から薬の受け取りまで一カ所で完結できる環境は大きな安心につながると考えています。
併設していることで、使用方法をその場で具体的に説明することも可能になります。皮膚科や泌尿器科の診療では、患者さまが自宅で行うケアの質が治療効果に直結します。そのため、診察以外の時間にも適切な対応ができるよう、薬の意味や使い方をしっかり伝えることが重要になります。
____医師としてやりがいを感じる瞬間はどのような時ですか?
形成外科や泌尿器科の治療は、日常生活の質を高めることが主な目的となります。たとえば排尿障害で夜中に何度もトイレに起きるような患者さまが、アドバイスや、薬の力を借りて眠れるようになるわけです。このように患者さまの不快や不安が改善されることにやりがいを感じますね。
勤務医時代には乳がん手術後の乳房再建に多く携わってきました。病気そのものを治すだけでなく、治療後の心の回復を支える役割も医療機関にはあると考えています。近年、多くの病気は「共に生きる」時代になりつつあります。そうした中で、患者さまが前向きに自分の人生を歩めるような医療を提供し、気持ちの面からも支えられる存在でありたいですね。患者さんの笑顔や言葉が、私自身の励みになっています。
____美容医療をとおしてやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?
美容医療では、患者さまから元気をいただくことは本当に多いですね。三重県では美容医療を利用される方の年齢層が比較的高く、悩んでいた期間も長い分、改善したときの喜びも大きいのだと思います。笑顔を取り戻すお手伝いができることに、日々やりがいを感じています。
「家庭の笑顔」が街を明るくする。医療を通して地域に貢献
____地域の皆さまへの思いについてお聞かせください。
三重県津市は、自然が豊かで気候も穏やか、食べ物も美味しく物価も比較的安定していて、とても暮らしやすい土地です。歴史的にも伊勢神宮をはじめ、文化が根付いた地域で、精神的にも安定感のある場所だと感じています。
私自身、一度も三重県を離れたことがなく、この地に対する愛着は深く、生活の拠点としても開業の地としても迷いはありませんでした。津市でクリニックを開業したのも、地域に不足していた「形成外科」の医療を届けたいという思いからでした。
三重県には形成外科がまだ十分になく、適切な治療の選択肢が限られている現状があります。傷跡や皮膚の悩みがありながら、わざわざ病院に行くほどではない、とあきらめていた方が多くいらっしゃいます。だからこそ、地域の方々にもっと形成外科の可能性を知っていただき、日々の生活を少しでも前向きに過ごしていただけるようなお手伝いをしたいと考えています。
____最後に、この記事をお読みの患者さまへメッセージをお願いします。
地域を元気にするには、まず身近な人の笑顔を大切にすることです。私自身、ラジオの子育て番組などでもお話しさせていただいていますが、家庭の中でお母さんが笑顔でいると、家族全体が明るくなり、自然とその雰囲気が地域へ広がっていきます。家庭が一つの単位として輝いていけば、やがて街全体が明るく、あたたかな場所になるはずです。医療を通じて、そんな笑顔の連鎖を地域に広げていける存在でありたいと願っています。

副院長 梶原 愛莉砂(かじわら ありさ)
三重大学医学部医学科卒業後、市立四日市病院での研修を経て、名古屋大学形成外科へ入局。市立四日市病院形成外科にて勤務する傍ら、三重大学医学部附属病院形成外科にて非常勤医師として従事。2023年「津かじわらクリニック」を開院し、副院長に就任。2025年には 医療法人進愛会を設立し現在に至る。
形成外科 皮膚科
日本形成外科学会 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 Beauty Japan 2020 キャリア部門グランプリ Beauty Japan アカデミー学長
問い合わせ
059-221-2121
津かじわらクリニック
公式ホームページ:https://www.tsu-kajiwara.clinic/
取材日: 2025年8月6日